2011年04月24日

21世紀型企業経営

深セン和僑会で講演をさせていただいた.

今回の講演では「21世紀型企業経営」というタイトルで,話をした.

企業は資本家が利益を得るための道具であり,従業員は労働と引き換えに賃金を得る.20世紀の企業はこのような資本家と労働者の対立関係で成り立っていた.

21世紀の初頭である今,企業を社会的公器と捉える考え方が一般になってきており,資本家と労働者は労働搾取の関係ではなく,協調関係になってきているといえるだろう.つまり,企業の繁栄は資本家が利益を得るためだけではなく,企業繁栄の結果労働者も幸せになる,という関係で理解されている.

しかし企業とは利益を追求するものだという根本は変わっていない.

それに対し21世紀型企業は,従業員を幸せにすることを目的とする.
その結果企業が繁栄する.
20世紀型企業とは,目的と結果が逆転している.

原田則夫氏が目指した「理想工場」が21世紀型企業なのだと理解している.
出稼ぎ労働者が,退職後田舎に帰っても幸せになれるようにホンキの育成をする.
原田氏の元秘書には,日本語ができるだけではだめだと,会計学を教えた.
彼女は後に格力という大手の空調機メーカの社長になっている.

倒産寸前だったSOLID社を,人を育てることを目的とした会社に再生し,あっというまに優良企業にした.
これが21世紀型企業経営だ.

21世紀型企業経営を引き継ぐ者たち

 原田氏が実現した「理想工場」のあり方を「21世紀型企業経営」という形で言語化してみた.これは工場だけに応用できる考え方,手法ではない.
サービス,販売など全ての業態に適用できる哲学だ.

原田氏の直弟子たちや,私たちのような原田氏の考えに共鳴する者たち(原田チルドレン)が,次々と21世紀型企業を作り上げなくてはならない.
そうすれば大人たちは皆幸せになり,それを見ている子供たちが将来に夢を持つようになる.

子供たちに夢がなくなれば,私たちの未来はない.

この21世紀型企業は,実は昔からその原型が日本の企業の中にあった.
従業員を思いやる「家族経営」がそれだ.

家族経営というと,非近代的な経営管理というネガティブな面に焦点を当てがちだが,人を育てて活用するというポジティブな側面を持っていたはずだ.
従業員の幸せを願い経営をするという21世紀型企業経営の原点がここにあるような気がする.

その証拠に,原田氏を知らない経営者で21世紀企業経営をしている経営者はいる.
江蘇省太倉市に工場を立ち上げた,松丸公則氏も21世紀型企業経営者だ.

彼は著書「さらば,さもしい経営者」の中で,
従業員は家族だ.家族として迎え入れる人の面接を社長自らせねばならない.
といっておられる.19人の管理スタッフばかりではなく.全ての作業員も自ら採用面接をしている.

彼の工場立ち上げの成功の方程式は,
従業員が幸せになればおのずと経営者も幸せになる.
経営者が幸せになれば幸せな会社が生まれる.
幸せな会社が集まれば社会が幸せになる.

私利私欲を目指すのではなく,人を育て公利公益を目指す.
社会的公器と呼べる企業は大企業だけではない.
公利公益を目指せば,中小企業も社会的公器となり,尊敬される企業となる.

21世紀型理想工場を立ち上げた松丸氏が得た最大のものは,従業員全員で開催した送別会での感動だったのではないだろうか.
著書を読んで私も目頭が熱くなった.


松丸公則氏の著書
「さらば、さもしい経営者」


講演に使用した資料はこちら
21世紀型企業経営.pdf

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posted by 林@クオリティマインド at 22:20| Comment(0) | TrackBack(0) | コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年08月05日

企業大学

あとで読む江戸時代末期から明治にかけて越後長岡藩に,小林虎三郎という人がありました.
この人物は,吉田松陰(吉田寅次郎)と同じ象門の門下生ですが,「象門の二虎」と称せられるほどに学問に秀でていたそうです.

長岡藩は戊辰戦争後,経済的に大変な窮地に立たされます.窮状を見かねた三根山藩が米を百俵贈っています.この時小林虎三郎は,もらった百俵の米を全て売り払ってしまう.長岡藩には腹をすかした民が大勢いたのに,米を売って手にしたお金で学校に必要な教材や機材を買うのです.
この時小林虎三郎は「国が興るのも,街が栄えるのも,ことごとく人にある.食えないからこそ,学校を建て,人物を養成するのだ」と言っています.

苦しいときにこそ人を育成する.
「人口」とはよく言ったもので,人には皆,口が付いています.国は民にモノを食べさせなければならない.経済的に困窮している国にとっては,大きな負担です.しかしそれに耐えて人を育成すれば,食べさせなければならなかった民が,街を栄えさせ,国を興すのです.

この精神が,日本的経営「人は育てて遣う」の根源です.


原田師はよく自分の会社を「企業大学」と呼んでいました.
農村から出てきた学歴の低い若者を,一から育て上げるのに情熱を注いでいました.

大学と言っても「教える」のではありません.「育てる」のです.
知識を教えるだけではなく,その知識が能力となり行動できるように育てるのです.

お腹が空いている人に魚を与える.与えた魚を食べてしまえば,またお腹が空きます.
お腹が空いている人に魚の獲り方を教える.教えただけでは魚が獲れる様にはなりません.
お腹が空いている人に魚が獲れる様にしてやる.これでこの人は生活ができるようになります.

モノを与えるのではなく,知識を与える.
知識を教えるのではなく,能力を育てる.

「教育不如培養」です.


こうして育てた,若者はどんどん外に出してしまう.「企業大学」なので当然卒業させるわけです.
せっかく育てたのに,もったいないと思います.原田師曰く「親ならば他に良い学校があれば,そこに子供を入れてやりたいと願うのは当然だ」あくまでも人を育てることを主眼に置いた経営だったのです.

それは3ヶ月で辞めて行ってしまう女子作業員に対しても同じでした.
「お互いに助け合い,育てあう文化に触れた若者が,農村に帰って子供を育てれば,素質の高い人がどんどん増える.その人たちが,ウチで作っているSONYの製品を買うようになるのだ」と原田師は言っていました.


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posted by 林@クオリティマインド at 20:08| Comment(0) | TrackBack(0) | コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月05日

企業の最終兵器

業績を上げるためには,従業員を育てなければならない.しかしそれだけでは,会社は育てられない.

以前サラリーマンだった時に,インドネシアに工場を立ち上げた事がある.この時はすばらしい工場を立ち上げられたと自負していた.当初鍛え上げた作業員たちは,改善意欲が高く,「不適合」に敏感な立派なリーダに育った.

当時は生産委託先で問題があるたびに「インドネシア工場を見習え」と発破をかけていた.実際にインドネシアまで工場見学に行かせたこともある.

しかし「継続」ができて初めて工場を育てたといえるだろう.
優秀なリーダがやめてゆくたびに少しずつ工場の力は落ちていった.
リーダたちは自らのキャリアアップのために,どんどん転職してゆく.
当時はリーダの離職をどうしたら止められるかと考えていた.

しかし解決方法はそこにはなかった.

育てたリーダの能力(暗黙智)を組織の形式智に置き換える.
組織の形式智を次々と新しいリーダに受け継がせるための仕組みと仕掛けを導入しなければならない.そしてその仕組みと仕掛けがうまく回る企業文化を構築する.それができて初めて「継続する」という課題が解決できる.

5年前に原田則夫氏に出会ってそれが分かった.
前職時代にこれが分かっていれば,きっとインドネシア工場の経営をさせてくれと上司に願い出ていたと思う.

初めて原田氏の工場・SOLIDを訪問した日の夜,ホテルに戻り長文のメールを元同僚に送った.
現在インドネシア工場は,より高付加価値・高品質の製品を生産し,世界中に供給している.元同僚たちが立派にインドネシア工場を育ててくれた.


人財は企業最大の戦力であるが,人財が継続して育つ仕組み・文化は企業の最終兵器だ.
posted by 林@クオリティマインド at 23:23| Comment(0) | TrackBack(0) | コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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